皆さんは廃鶏というものをご存知でしょうか?
廃鶏とは、採卵期間を終えて鶏舎から出される雌鶏のことで親鶏や成鶏と表記されることもあります。
全国の養鶏場に多くの廃鶏が今もなおおり、肉用鶏と比べ価値が低く等とも限られる為、劣悪な扱いを受け中には死亡してしまうものもいます。
この記事では沖縄の廃鶏に関する現状と、どのような対策・活用方法を行っているかを紹介していきます。
1.沖縄の養鶏業と廃鶏の現状:課題と未来の可能性
沖縄県の養鶏業では現在近年の物価上昇の影響もあり飼育コストや設備費用の上昇や廃鶏処理施設の不足などの問題に頭を抱えています。
しかし、上記の対策として循環型農業や有機飼料の使用など、新しいアプローチも進められています。
こうした方法によって環境負荷を減らし、消費者にも安全な製品を提供する事を目的として推進されています。
また沖縄県では多くの養鶏場があり、鶏の本来の生態に近い飼育方法が注目されています。
例えば、一部の養鶏場では自然光や新鮮な空気を確保し、土を活用した自然循環型の飼育環境を提供しています。
このような飼育方法は持続可能な農業の一環として評価されており、鶏の健康を維持し、産卵期間の終了した廃鶏達を健康に飼育し続ける事につながっています。
上記のように沖縄県内の養鶏業では様々な取り組みが行われています。
伝統的な養鶏技術を継承しつつも、近代的なテクノロジーを活用する事で衛生管理や生産性の向上を行い、品質の高い商品を消費者に届けています。
廃鶏に関しても、健康を維持する為の飼育環境を整える事で飼育途中で死んでしまう個体を減らす事に繋げています。
しかし、沖縄県内全体で廃鶏を管理する施設の不足や廃鶏の活用方法に悩んでいる事は事実であります。
次のトピックでは沖縄の廃鶏が抱える問題とその解決策について紹介していきます。
2.沖縄の廃鶏問題とは?背景と解決策を探る
沖縄県でも同様に廃鶏の管理や処分に頭を抱えています。
廃鶏の扱いに関しては、うるま市に生産者に代わって鶏卵の集荷や洗卵、販売などを行う県鶏卵食鳥流通センターがあり廃鶏を無料で引き取って管理処理をしていましたが、設備の修繕費や累積赤字の関係で現在は1羽40円で廃鶏の引き取りを行っています。
県鶏卵食鳥流通センターではほぼ県内の廃鶏を扱っており、年間約52万羽ほどおり厳しい運営状況が続いています。
沖縄県内では北部地域では廃鶏を食用として加工し食する文化がありますが 、それでも県内の廃鶏を全て賄えるほどではない為、他の解決策を模索する必要があります。
そもそもなぜ廃鶏の扱いに困っているのかというと2つ理由があります。
1つ目は廃鶏の処理が難しいことにあります。
元々食用として飼育されている鶏と比べ硬く肉質も悪いことからミンチにするなどの加工を行わないと食用とする事が難しく活用方法に悩みを抱えています。
加工方法が捻出されない限り廃鶏の廃棄が行われますが、廃鶏の焼却処理に伴う環境負荷が大きい為、こちらも大きな課題と言えます。
2つ目は廃鶏処理施設の不足です。
沖縄県では上記で紹介した県鶏卵食鳥流通センターがありますが、現状県内全ての廃鶏を管理処理はできておらず、適切な管理が行き届いていない場合、廃鶏が死亡してしまったりと動物愛護的な観点でも問題があります。
次に現在問題を解決する為に行っている対応策としては2つあります。
1つ目は廃鶏の食品加工になります。
課題の所でもお話ししましたが、食用鶏と比較して肉が固くそのまま食べるのには向いておらず何らかの加工を行う必要があります。
具体的には廃鶏の鶏ガラでスープを作成したり、ミンチにした廃鶏の肉を用いた料理にしたり、ペットフードに利用するなどの取り組みが行われています。
2つ目に廃鶏の骨粉を農地の肥料に使用する事です。
廃鶏は焼却処理を行っていますが、この焼却処理から発生する環境負荷が大きい為、焼却処理自体を減らす必要があります。
そこで現在廃鶏の骨粉を農地の堆肥や肥料として再利用する事を模索していますが、堆肥や肥料として再利用を行うためには養鶏業の従事者だけでなく農業に従事する人々との連携が不可欠な為、お互いに良い結果になるよう話し合いを行い改善策を考えていく必要があります。
このトピックでは沖縄県内で背景に関する問題と解決策について紹介していきました。
現在沖縄県内では廃鶏の管理施設が不足しており、その結果廃鶏の廃棄処分や管理過程で死亡してしまう事があり動物愛護的な問題もあります。
また、廃鶏は食用にする為の加工が難しいですが、近年のフードロスに関する問題もあり優先して解決すべき問題であると考えます。
しかし、すでに沖縄県内では廃鶏の再利用について対策を行っている人々もいる為、そちらについて次のトピックで紹介していきます。
3.廃鶏を無駄にしない!沖縄での再利用事例と取り組み
このトピックでは沖縄県内で行われている廃鶏の再利用に関する取り組みについて紹介していきます。
①沖縄名護市の羽地鶏
沖縄県の名護市では古くから廃鶏を羽地鶏と呼び様々な調理方法でローカルグルメとして昇華させています。
羽地鶏は約2年間元気に卵を産んだ親鳥で、卵を産んでいる期間は投薬なども行っておらず、鶏本来の肉質と味が楽しめます。
羽地鶏の食べ方としては、コトコト煮込んで鶏だしを取るのはもちろん、だしをとった後の鶏肉も鶏汁やチャンプルー(炒め物)の具として、無駄なく頂けます。
また羽地鶏を肉料理として調理する際は、圧力鍋で調理するか、重曹などで漬け込み柔らかくしてから調理する事が推奨されており家庭の食卓でも廃鶏が振る舞われています。
その他にもふるさと納税で廃鶏の炭火焼きを販売していたりと、全国で廃鶏を味わう事が可能となっています。
②廃鶏を害虫駆除へ再利用
こちらは沖縄の東村で化学肥料や農薬を一切使用しない自然循環型の栽培を実践しているマンゴー農園で、その中の試作の1つとして廃鶏が活用されています。
具体的には、卵を産まなくなった廃鶏を引き取り、米ぬかや沖縄の土壌菌を餌に飼育を行い園内で飼育を行います。廃鶏は、マンゴーの葉などを食べるバッタを捕食する事で害虫の駆除を行なってもらい廃鶏から出る糞は肥料として利用しています。
③国頭のソウルフード「ハイケイ」
沖縄県の国頭村では古くから廃鶏を炭火焼きにして塩とこしょうで味付けして食べる習慣が根付いています。
廃鶏は従来の鶏肉に比べて肉質が硬いですが、健康に育った個体が多く鶏肉本来の味が楽しめる料理となっています。
国頭村では定期的に様々なイベントでハイケイが振る舞われており、多くの地元民や観光客にハイケイを振る舞うことでおいしさを広めています。
また、ハイケイだけでなく廃鶏を使用した出汁のラーメンや親子丼など様々な調理方法の料理で廃鶏を再利用し、廃鶏の美味しさを広めています。
④家庭での廃鶏の活用 やんばる地域
沖縄県北部のやんばる地域では廃鶏を食す習慣があり、スーパーにも廃鶏が販売されています。
やんばる地域ではバーベキューの定番食材としてハイケイが広く認知されており、特に国頭村ではハイケイを上手に焼ける人をハイケイマスターと呼んでいます。
イベントなどでハイケイを振る舞う際はこのハイケイマスターが美味しいハイケイを調理し振る舞っています。
一般的にやんばる地域の家庭では、塩とコショウで味付けした炭火焼きのハイケイだけでなく様々な調理方法で食されています。
廃鶏は肉質の硬さがネックになっていますが、こちらは適切な下処理と調理方法を行う事で美味しくいただける為、そのノウハウが各家庭に浸透しています。
このように沖縄県内では様々な方法で廃鶏を再利用しています。
古くから食されているハイケイを観光客に振る舞う事で廃鶏の美味しさを知ってもらったり、管理しきれない廃鶏を引き取り農園の害虫駆除や肥料の作成に使用しながら飼育をするなど廃鶏を有効活用しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は沖縄県の廃鶏についての問題とその解決策について紹介していきました。
廃鶏の処理施設の不足という大きな問題を抱えており、こちらの解決には時間がかかるかと思われます。
しかし、そんな中でも沖縄に根付いている廃鶏を利用した食文化や新しい廃鶏の活用方法など様々な方法で廃鶏を有効活用しようとしている人々が多くいます。
沖縄北部の伝統料理であるハイケイは素材本来の味を生かした料理となっており、一部の人からは地鶏のような味わいを楽しめるとも言われている為、興味のある方はぜひ一度食してみて下さい。
この記事が沖縄県の廃鶏に関わる人々のお役に立てば幸いです。
参考URL
https://www.pref.okinawa.jp/shigoto/chikusangyo/1011238/1011346.html
https://note.com/shuji_yasumura/n/nce733019e2eb
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1594510.html
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1419784