沖縄本島から南西に約300km、東京から約2000kmに位置し、大小6つの島(宮古島、池間島、来間島、伊良部島、下地島、大神島)で構成される人口約55,000人程の宮古島!そんな宮古島はアジアNo.1とも言われる美しいビーチを複数持ち、観光地として国内外からの人気がとても高いです!宮古島の代表的な観光地としては与那覇前浜ビーチや、絶景が望める伊良部大橋などがあり、例年観光客で島内は賑わっています。そんな観光での盛り上がりや、それに伴うホテルや住宅の建設ラッシュの様子は「宮古島バブル」とも言われ、マスコミでも度々報道されており、宮古島の経済はかなり活性化していそうですよね?
しかし、そんな状況の中、2020年に新型コロナウイルスが発生してしまいました。。コロナウイルス渦中の現在の宮古島の状況はどうなっているのでしょうか。そして「宮古島 バブル」とまで言われた宮古島経済の盛り上がりはなぜ生じたのでしょうか?本記事では、そんな宮古島の様子を各種データを参考にしながら考察していきます!。
宮古島の人口について
まずは宮古島の人口について確認しましょう!以下の「宮古島市の人口推移」は、昭和25年からの宮古島市の人口推移のグラフです。なお、データの取得ができなかったため、年度は非連続となっております。。宮古島は昭和30年をピークに人口が減少、そして平成に入ってから60,000人以下となり、近年は55,000人前後の推移が続いています。ピーク時からの人口減少が生じた理由としては、宮古島から沖縄本島や県外への出稼ぎといった就業に関すること、都党内に大学や専門学校がないため、成人付近の若者の島外への進学など考えられます。
■参照元
沖縄県企画部統計課『沖縄県統計資料WEBサイト 宮古地区市町村別人口の推移 昭和25年から令和元年』
宮古島にも当てはまる。離島の人口減少問題について
宮古島をはじめとした島嶼地域にとって、このような人口減少は非常に大きな問題です…島外への人口流出は、「島の活性化に必要な人材・頭脳流出の可能性も否定できません。若年人口の島外流出による急速な人口構成の「高齢化」はとくに日本の離島の共通の課題である。人口流出によって、生活インフラのみならず、医療、教育、環境保全、地場産業なども維持できない離島が増加しつつある。」(嘉数 2019が参考)とあるように、様々な深刻な問題を引き起こしかねないので、人口流出に歯止めをかける方法や、就職や進学で島外へ出ていったとしてもUターンできるような仕組み作りをしていく必要がありますね。
■参照元
嘉数啓『島嶼学: NISSOLOGY』
離島の人口減少問題について考察!
また、人口が減少した他の要因については、以下も可能性の一つとして考えられます。宮古島が観光地として認知、絶大な人気を誇るようになったのは、芸能人による扇動や離島ブームが起きた平成に入ってからなので、人口減少が最も多かった昭和35~55年頃は観光地としての需要や認知、イメージの確立が今程は無く、観光関連業に従事する人の移住や雇用が宮古島内で進まなかったこともあるのではないでしょうか。
宮古島バブルの始まり?観光客は急上昇!
減少していた宮古島内の人口と対照的に、宮古島への入域観光客数は増加傾向で、下記の「宮古島市 入域観光客数」にあるように、平成27年から30年にかけて右肩上がりで増加しています!観光客数の増加要因については、国内屈指のダイビングスポットといった地域の魅力もありますが、より決定的なのは中国、台湾からの観光客を乗せた「海外クルーズ船」が平成27年から寄港したことが考えられます。圓田は宮古島のクルーズ船について以下のように調査しています。「2017年10月30日に、宮古島観光協会を訪問し、クルーズ船寄港数について話をうかがっている。2016年度85回、2017年度150回を予定、最大6,000人が乗る大型クルーズ船が来航したこと、2020年4月にはクルーズ専用の旅客ターミナルとバースが完成し、2022年度には250回予定している。」また、クルーズ専用の旅客ターミナルは2021年現在、完成はしているが新型コロナウイルス蔓延のため寄港船数が激減、運用はされておりません。現在は稼働していないとしても、平成27年から30年にかけたクルーズ船の寄港が宮古島市内の観光客数を急増させた大きな要因の一つであることは確かでありますね!
宮古島が潤った?!クルーズ船の経済波及効果
また、クルーズ船をはじめとした観光客の増加は様々な観光関連ビジネスの活性化にも寄与したようです!。圓田によれば、クルーズ船に寄港が始まったことにより、宮古島島内のタクシー会社もは13社から15社へと増加、レンタカー会社は島内約70社で、100台以上もつ大手から数台を保有する零細業者、レンタカー専門業者から民宿や小さなペンションを営みつつレンタカー数台を貸し出しているところまで様々な業者が乱立し、クルーズ船により増加した観光客に商機を見出していた企業が宮古島内には多くあるようです。
みやこ下地島空港ターミナルの影響も大きい!
2019年(平成31年)には「みやこ下地島空港ターミナル」も開港されました。。開港した1年後に新型コロナウイルスの影響により利用者数は激減してしまいましたが、2019年の開港当初より、下地島―成田線が就航。その後は関西・香港を結ぶ定期便および国内・国際線のチャーター便が運航して1 年間で約12万5 千人の利用者がいるなど、宮古島への集客効果はかなり大きなものであったと思われます!
経済的には成功。しかしオーバーツーリズムの問題も。
しかし、このような観光客の急増とは裏腹に、宮古島島内に居住の住民は20年近くもほぼ一定となっています。島民ひとりあたりの観光客が増えること、何より増加しすぎた観光客は宮古島の様々な資源をハイペースで消化させ、本来のキャパシティを超えたオーバーツーリズムとなっている可能性も否定できません。りゅうぎん総合研究所によれば、宮古島地域は、ホテルや二次交通の受入態勢が追い付いていない可能性があり、ある意味、沖縄県内のオーバーツーリズムの縮図といえる。と指摘をしています。このことから今後の宮古島の観光を考える際には「持続可能な観光産業の発展」という視点を今まで以上に強く持って、観光産業を活性化させる必要がありそうです。
■参照元
圓田浩二『沖縄県宮古島におけるクルーズ船観光の現状と地域社会の変容』
株式会社りゅうぎん総合研究所『沖縄県内のオーバーツーリズムの現状および課題』
増加した観光客を背景に宮古島島民の所得が上昇?
このように宮古島は2020年に発生した新型コロナウイルス以前は、大型クルーズ船の寄港などもあり観光客数がかなり増加、島内経済はかなり活性化していたように見えます。では、この観光客数増加を受けて宮古島の経済はどのような変化をしたのかを考えていきましょう。
以下の「宮古島市 平均所得」の図は、平成22年から令和1年の宮古島市の住民の年間平均所得です。これを見ると平成28年までは、ほんの少しではあるが年々微減しており、大型クルーズ船が寄港を始めた平成29年以降は所得が上昇しています。。このことから観光客が増加したことにより、宮古島内全体が観光客数増加の恩恵を受け、所得向上へ繋がっていることが考えられますね。
■参照元
ハローワーク『沖縄県宮古島市の平均年収・平均給与データ』
建設ラッシュと不動産バブルが遂に始まる!数字で見る宮古島バブル!
バブルによる建設ラッシュ!増加した宮古島の不動産!
そんな宮古島は観光客数の増加に伴いリゾートホテルなどの建設ラッシュが進みその様子はまるで「バブル経済」とまで言われるようになりました。現に、以下の新設住宅の件数を表す「宮古島市 新設住宅着工戸数」の図を見ると、着工数は平成30年から大幅に増加しています。この増加数は、リゾートホテル建設のための作業員や、島外から宮古島に移住して働く観光関連産業に従事するスタッフが住むためのアパートやマンションなどの建設が多いことが考えられます。このデータから、宮古島島内には急増した観光客に対応するために、関連する施設・物件が多数建築されたことが分かりますね!
建設ラッシュだけじゃない!不動産価格も急上昇!
また、建設ラッシュで建築数が急増しただけではなく、物件の価格も急高騰しています!それぞれ平成28年から平成30年の値動きを確認すると、新築1R~1LDKの相場は48,300円からは57,099円と約18%増加、新築2R~2LDKの相場は63,800円から73,921円と約15%増加、そして、新築3R~3LDKの相場は69,000円から79,015円と約14%増加と大幅な増加が確認できます。
沖縄国際大学によると、入居タイミングや物件によっては、宮古島市内で1LDKで13万円の物件もある(東京都新部と同じ賃料)旨の記載があります。当時の宮古島は正に賃貸バブルであったのかもしれませんね。このような賃貸バブルになった背景としては、建設のための従業員を島外から雇い入れることによる物件不足に対して供給が追いつかず、需要が供給を大きく上回った結果、家賃の高騰をもたらしたことが考えられます。
■参照元
ハローワーク求人情報『沖縄県宮古島市の平均年収・平均給与データ』
株式会社おきぎん経済研究所『きぎん賃料動向ネットワーク調査 (2017年)』
株式会社おきぎん経済研究所『きぎん賃料動向ネットワーク調査 (2018年)』
コロナ禍の宮古島の今
コロナによる宮古島観光業への大ダメージ
さて、観光客の急増、建築ラッシュ、賃貸バブルが生じた宮古島ではあるが、コロナ禍の現在はどうなのでしょうか。 沖縄本島や他都道府県の観光地のように宮古島の状況も芳しくありません。観光客数の増加に大きく寄与した海外からの大型クルーズ船の入域観光客数は、2018年の42万6777人、2019年の39万6338人と順調に推移していただが、新型コロナウイルスに蔓延した2020年には0人となってしまいました。これにより宮古島の観光消費の数億円が消え去ったことが言われています。
さて、観光客の急増、建築ラッシュ、賃貸バブルが生じた宮古島ではあるが、コロナ禍の現在はどうなのでしょうか。 沖縄本島や他都道府県の観光地のように宮古島の状況も芳しくありません。観光客数の増加に大きく寄与した海外からの大型クルーズ船の入域観光客数は、2018年の42万6777人、2019年の39万6338人と順調に推移していただが、新型コロナウイルスに蔓延した2020年には0人となってしまいました。これにより宮古島の観光消費の数億円が消え去ったことが言われています。
また、「2020年のトータルの観光客数は440,680人で前年比約60%のダウンとなった。外出自粛や観光客激減などに伴い2020年4月の営業収益が前年同月比で8~9割減少しているという。」という記載(『琉球新報』2020.5.3)、また、「市内主要ホテルの2020年度年間平均稼働率は27・18%となり、前年度を30・21ポイント下回る大幅減となったことがこのほど分かった。」(『宮古新聞』2021.4.22)ということからも宮古島島内の観光関連産業は深刻な危機に陥っていることが分かります。
例年大盛況だった!宮古島内でのイベントも中止
イベント関連で言えば、宮古島の2大イベント、全日本トライアスロン宮古島大会、宮古島ロックフェスティバルは2020年は停止、トライアスロンはオンライン(バーチャル)での開催となり、イベントによる観光客の誘致は0となってしまっています。。その他のイベントなども2020年以降、宮古島島内では開催できていない状態が続き、島内の観光、飲食、その他サービス業にとって苦しい時期は長く続いてしまっているのが現状です。
医療体制など課題は山積み。コロナ期だからこそオーバツーリズムなどの島が抱える問題点の見直しを。
その他にも島嶼地域ならではの、医療体制の脆弱性、クラスターの危険性など、経済以外の問題も多くあるため、それらの問題にも対処をしていく必要もあり、課題や山積みです。
このように新型コロナウイルスなどの外部影響に観光産業は非常に脆弱であるため、宮古島をはじめとした島嶼地域はいきすぎた観光産業のウエイトの見直しを図るとともに、ここ数年で増加しすぎた観光客によるオーバーツーリズムを是正などを図る必要があると考えます。この機会に島嶼の資源を守りつつ、経済を活性化させるあり方を再考していく必要があるでしょう!
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この記事の執筆者
沖縄県にある高校を卒業後、都内の大学に進学、ベンチャー企業やコンサルティングファームを経て、現在は沖縄を拠点に活動するフリーランスWebマーケター。琉球大学大学院で沖縄経済についても研究中。マーケの仕事と沖縄経済研究を専門にしています。 webマーケは全般対応可能でpythonや統計(計量経済学)を組み合わせた自動化や定量分析・運用が差別化ポイント。研究テーマは「沖縄経済」「生産性」「計量経済学」のあたり。沖縄の社会問題に関心があり、歴史や制度的な問題が複雑で実態が掴みづらい沖縄県が抱える問題をなるべく数字を出して発信しています。