美しい海や他県にはない独特な風景など、自然豊かな沖縄県。人と人との繋がりも深く、助け合いの精神が溢れたとても魅力的な県です。その一方、全国的に見ても「貧困問題」を抱えている側面もあります。特に、沖縄県の女性の貧困率はかなり高く、多くの女性が苦しんでいるのが現状です。
こちらでは、沖縄県が抱える女性の貧困問題について、データを用いてご紹介いたします。
そもそも貧困率とは?
沖縄県は全国的に見ても貧困率が高い県だと言われています。しかし、「貧困率」とは何を基準に考えているのでしょうか?厚生労働省が発表している貧困率の定義として、「一定基準(貧困線)を下回 る等価可処分所得しか得ていない者の割合」と記載があります。<.p>
この定義だと「何の事を言っているのか?」と分からない方もいらっしゃると思います。貧困率を理解するためには、「等価可処分所得」「貧困線」について把握しなければなりません。
まず初めに、等価可処分所得は税金や社会保険料を除いた所得の事であり、所謂、手取りの総額を表しています。この等価可処分所得を表すことで、生活水準を測ることが可能です。また、生活水準は所得だけではなく、世帯人数も考慮しなければなりません。世帯人数が多ければその分、必要となる所得額も多くなるため、各世帯によって生活水準は変わります。
世帯人数を考慮した際に、必要となる所得の中央値を表した額が「貧困率」です。厚生労働省が2018年に公表した「世帯人数別の必要な等価可処分所得」についてのデータが以下になります。
表1.世帯人数別の等価可処分所得(貧困線)
世帯数 | 単身者世帯 | 2人世帯(大人1人、子ども1人) | 3人世帯(大人1人、子ども2人) | 4人世帯(親2人、子ども2人) |
等価可処分所得 | 124万円 | 175万円(月々約14.5万円未満) | 215万円(月々約18万円未満) | 248万円(月々約20万円未満) |
上記の年収を下回ってしまった場合には、貧困状態という判断になってしまいます。また、日本に居住しているひとり親の半数が「貧困」と判断されており、先進国の中では最低基準のデータです。
■参照元
認定NPO法人3keys(スリーキーズ)「白書 – 日本の子どもたちの今」
沖縄県の出生率は全国1位!?しかし、その裏には…
先ほどの節で「世帯人数」についてお話をさせて頂きましが、2015年から2020年の都道府県別世帯増加率のデータを見ると、沖縄県は5年間で9.3%も世帯が増加しており、全国平均の2倍以上の数字を記録しています。
また、沖縄県は出生率が高い県として常に全国上位をキープしており、その影響から世帯数も増えていると予想ができます。少子化が国の問題に挙がっていますが、毎年全国平均を大きく上回る出生率を記録している事は本当に誇らしいですね!
人口も世帯数も増えているため、何も問題がないように思える沖縄県ですが、その裏には人口・世帯数増加と同時に「離婚率の高さ」が問題として挙げられています。
沖縄県の離婚率の高さは全国的に見ても上位であり、その影響からひとり親の家庭が多くなっているのが現状です。
平成30年のデータになりますが、沖縄県内の世帯数591,388世帯に対し、母子世帯は28,860世帯となっており、母子世帯の出現率が4.88%を記録しています。
この記録からも沖縄県はシングルマザーが多い県になります。
沖縄タイムス「沖縄、35分16秒に1人誕生 出生率46年連続全国トップ
沖縄での女性の仕事は!?全国と比べて収入が落ちることによる影響は考えられる?
「離婚率」以外にも、「所得の低さ」も問題です。沖縄県は全国的にも賃金が低い県であり、県民がその生活に慣れてしまっているのが現状です。
収入が低い理由は県民性や沖縄県にある企業・業種の制限など様々な問題がありますが、詳しい内容は 【2022年最新版】沖縄は最低賃金が日本一低い?その理由を徹底考察!に記載させて頂いています。
また、沖縄県に在住のシングルマザーの方の中には、10代後半から20代前半で「妊娠」「出産」している方が多くいます。
子どもを養うためにお金を稼ぐ必要があり、進学をせずに早くから働いている方がほとんどです。
妊娠により進学が難しいため、正規雇用となる確率が低くなり、その分収入が少なくなってしまいます。
このような事が沖縄県のシングルマザーの方の貧困率が高くなっている理由の1つになります。
さらに、正規雇用が少ない中で、これからの自身の事だけでなく、子どもの将来についても考えると、お金や生活などの経済的な部分だけでなく、不安な気持ちからくる精神的な負担も大きくなることが考えられます
■参照元
PRESIDENT Online 「10代から「出産→結婚→離婚」のループ…沖縄の女性たちが貧困を強いられる本当の原因」
子どもの貧困率も高い!?貧困の連鎖から抜け出せない理由とは?
内閣府が発表した「子どもの貧困に関する指標」のデータによると、沖縄県の子どもの相対的貧困率は29.9%で全国平均の2.2倍の数字を記録しています。さらに、ひとり親の貧困率は58.9%で、こちらも全国平均を上回る結果となりました。このデータから沖縄県の子どもの貧困率は非常に高い事が分かります。
また、「大学までの教育を受けさせたい保護者の割合」のデータを確認しても、小学1年生の児童を持つ保護者からも既に「経済的に受けさせられない」との回答が生じており、その割合は全体の約3割にも及びます。「子どもの将来も考えているのに、どうしようもできない」そういった悩みを持った親御さんが多数存在する事が現状です。
貧困の連鎖は、世代が変わっても抜け出す事は難しいとされています。子どもが高校生になると、家計を支えるために、アルバイトでお金を稼ぐケースも珍しくはありません。アルバイトを行うことで、生活の足しにはなりますが、勉学に影響が出る可能性が高いため、専門学校や大学への進学が難しくなってしまいます。中にはアルバイトが忙しくなり、学校を欠席・退学してしまう生徒も一定数いるそうです。さらには、在学中に「妊娠」する生徒もいる場合もあります。そうなった際、自分達で育てられる程の経済力がないため、シングルマザーとして雇用を求めるようになる事も少なくありません。
どちらの場合にも将来の選択肢が狭まってしまい、安定したお金を得る手段が少なくなってしまうため、貧困の連鎖から抜け出すことは厳しいことが予想されます。
その他にも、専門学校や大学に進学する際に借りる事ができる日本学生支援機構奨学金に関しても学費とは別に生活費用として使う家庭もあるとの事です。この奨学金は契約者に返済の義務があるため、仮に卒業した場合でも、完済するまでに数十年かかる場合もあります。契約者本人が本来必要とする分だけではなく、家計を支えるために必要なお金を借りる事で、その分契約者にかかる負担は大きくなり、貧困から抜け出すことが難しい事が考えられます。
■参照元
内閣府 「子どもの貧困に関する指標」
まとめ
いかがだったでしょうか?沖縄県の貧困は長年の課題として注目されています。
家庭の事情により、休学・退学せざるを得なかった結果、将来の道が狭まった方。若年層での「妊娠」や「出産」で進学を断念せざるを得なかった結果、正規雇用が難しくなった方々が多数いらっしゃいます。また、「離婚率」「仕事の職種」など、個人だけではどうする事もできない要素が重なってしまった事も貧困率が高い理由の1つでしょう。
少し厳しいお話になってしまい本当に申し訳ございませんが、この現状を変えるために、資格取得に挑戦してみたりと、コツコツとスキルを磨いていく事で仕事の幅が増え、正規雇用による経済面の不安も解消される可能性があると筆者は考えています。また、資格取得する事で、自己肯定感が上がり、自身だけでなく、子ども達や周りの方にもいい影響を与えることができると思っています。
筆者も自身のスキルを磨くために様々な事に挑戦中です。経済面や精神面など不安な事が沢山あると思いますが、ご自身やお子さんのこれからのために1つずつ何かに挑戦してみてはいかがでしょうか?
この記事の執筆者
沖縄県にある高校を卒業し九州地方の医療の大学に進学後、4年初期で途中退学。
その後は関西で自動車製造に従事後、現在は沖縄県でIT企業に勤務しながら個人で「マンゴー生産・販売」や「金融事業」に携わる。
さらに、「アプリ・HPの作成」、「webマーケ」について実践を重ねながら勉強中。
自身の異なる業種の経験から、沖縄県が抱える問題・盛んな業界の両方について、様々な目線で分析し発信しています。