全国的に見ても収入が低く、貧困層が多いと言われている沖縄県ですが、富裕層も一定数存在しています。しかし、富裕層と貧困層の差が大きいことにより、様々な課題が生じていることも現状です。なぜ、富裕層と貧困層の差が大きいのか?また、この差による沖縄県の経済への影響とはどのようなものなのか?今回は、貧富の差による沖縄県の問題についてご紹介いたします。
そもそもなぜ沖縄県は収入が低いのか?
2022年現在、沖縄県では、「収入の低さ」が課題となっています。収入が低い原因は様々ですが、貧富の差に大きな影響を及ぼしているのは「雇用形態」と「産業構造」であると予想されます。
1)雇用形態
沖縄県では、正規雇用の方が少ないことが挙げられます。実際に、沖縄県の非正規就業者率は約44.5%となっており、全国平均の38.2%と比べかなり高い数字です。また、正社員を希望する求職者は7割存在していますが、正社員の求人は3割であることからも正規雇用が難しく、生活が安定しないことが考えられます。
2)産業構造
産業構造による課題も大きな原因として考えられています。2022年現在も沖縄県の主産業は観光業(第3次産業)となっており、全国と比べても10%以上高い状況です。しかし、人手が多く必要な製造業(第2次産業)は全国と比べ、10%以上低いことが報告されており、県の有効求人倍率にも非常に大きな影響を与えています。製造業が発達しない原因としては「製造を行う工場を確保するスペースがない。」「陸続きの県ではないため、生産物の輸送にコストがかかってしまう。」ことが挙げられます。
■参照元
Re:okinawa「なぜ沖縄は貧困率が高いの?歴史や地域特性などを交えてご紹介!」
沖縄にはどのくらいの貧富の差があるのか?
2022年現在、沖縄県の平均年収は377.3万円で全国46位となっており、1位の東京都と比べ、約1.65倍の差があります。
しかし、世帯年収の統計分布を確認すると、男女合わせて、年収100万円〜250万円の層が最も多く存在しており、年収300万円未満の層も含めると、有業者数の46.4%と約半数を占めています。
全国的に平均所得が低い沖縄県の中でも、さらに所得が低い層が多く存在していることが現状です。また、以下の表は厚生労働省が発表した「世帯人数別の必要な等価可処分所得(貧困線)」のデータとなります。以下の表に記載されている、「等価可処分所得(貧困線)」を下回った場合には、貧困状態であると判断されます。世帯人数別でみても、沖縄県は年収100万円〜250万円の層が多くおり、この貧困線と近い数字となっていることからも、かなり厳しいといえるでしょう。この状況では、子どもの進学をするための費用を工面できないだけでなく、貯金もできません。
世帯数 | 単身者世帯 | 2人世帯(大人1人、子ども1人) | 3人世帯(大人1人、子ども2人) | 4人世帯(大人2人、子ども2人) |
等価可処分所得(貧困線) | 124万円 | 175万円(月々約14.5万円未満) | 215万円(月々約18万円未満) | 248万円(月々約20万円未満) |
一方、県内の大手企業や公務員といった職種では、平均年収以上の方が多くいらっしゃいます。しかし、そのような職種に就くには、大卒以上の学歴が必要であり、進学率が低い沖縄県では、高収入の職に就く事はかなり厳しいのです。
琉球新報 「貧富の差が激しい? ジニ係数全国2位の要因は分厚い低所得者層 【貧困雇用 沖縄経済を読み解く(3)】」
貧富の差によって考えられる影響は?
貧富の差により様々な影響が考えられます。その中でも「進学」には多大な影響が考えられるでしょう。実際に、沖縄県の大学進学率は39.2%であり、全国平均の55%と比べても10%以上低く、47都道府県の中でも最下位を記録しています。高校卒業後に進学しないのは、「所得が低く、経済的に難しい」ということが理由です。貧困層の子ども達は家庭の事情により、不可抗力で自身の夢や希望を捨てなければなりません。
さらに、所得の格差を測るための指標として、「ジニ係数」と呼ばれるものがあります。ジニ係数は、所得の格差が均等になるほど、0の数値に近づき、逆に格差が広がっている場合には1に近づきます。沖縄県はこのジニ係数が全国的にも常に高い数字にあり、長い期間、貧困に苦しむ家庭が非常に多いです。このことからも、進学率の低さや貧富の差が大きな課題であることが理解できます。
「進学」以外にも「DV発生率」も問題として考えられます。沖縄県の「DV発生率」は全国平均を大きく上回っており、その影響から県内配偶者暴力相談支援センターへ匿名での問い合わせが増えています。実名ではなく、匿名で相談する理由も「大きな問題になることでさらなる暴力が生じてしまう」という恐怖からなるものが多いのでしょう。
年収が低いことによりストレスが大きくなってしまう。そのストレスがDVという形となり、最終的に家族に恐怖を与えてしまうのです。さらに、DVの発生により、離婚率が高くなってしまう可能性もあります。沖縄県の離婚率の高さは全国でもワースト1を記録しており、その原因の多くは収入による幸福度の低さからなるものです。お金によって身体的・精神的に追いつめられる方が、勇気を振り絞ったのにも関わらず、匿名でしか悩みを話すことができない。貧富の差によって、今の沖縄県ではそのようなことが起こっているのです
■参照元
・沖縄県 「県内におけるDVの現状」
ELEMINIST 「所得格差を示す「ジニ係数」とは? 日本・世界が抱える問題と原因」
県の主産業である観光では…
沖縄県は観光業(第3次産業)が主産業です。綺麗な海や自然豊かな土地は他の地域にはない良さがあり、観光地として高い人気を誇っています。近年では、県内外の富裕層を観光のターゲットとした「ラグジュアリー・トラベル・ディスティネーション」という構想が開始されています。
実際に沖縄県には海外の富裕層が乗るクルーズ船の数が多くなっていますが、クルーズ船での観光では、3食ともに船内で飲食を行うため、沖縄の地に降りて食事を行ったりすることは多くありません。そのため、観光客の平均消費額は大きく伸びていない事が問題の1つとして挙げられています。また、富裕層向けの買い物を行う場所が無いことも原因です。有名な観光スポットである国際通りには、かつて「三越デパート」が存在していましたが、近くにショッピングモールができたことを理由に閉店しました。しかし、新しく誕生したショッピングモールも富裕層向けのスポットではないため、消費が落ち込んでしまったと考えられます。観光の醍醐味である「食事」や「お土産」の消費が落ち込んでいることを見ると、富裕層の取り込みは上手くいっていないと判断できるでしょう。
その他にも、リゾートマンションについても大きな変化がありました。ここ数年、沖縄県に存在するリゾートマンションの価格が上がり続けています。2022年になってもその勢いは衰えず、県庁所在地の那覇市から離れている土地でも大阪や名古屋の中心地水準に引けを取らないほどの価格です。ここ最近では、県外からの移住された方も増えており、県内の富裕層と移住者によってリゾートマンションの半分が購入されているものだと考えられます。しかし、そうなってしまった場合には、沖縄県外や海外の富裕層のマンションの購入者が減ってしまうため、観光客の数の減少に伴い、観光収入が減っていくことが予想されます。
■参照元
ファイナンシャルフィールド 「沖縄県は他の都道府県からの転入者が多い?その転入超過状況とは」
「今、金持ちが狙うエリアは?…沖縄の“リゾートマンション事情”に異変の「ワケ」」
Mile-points.com 「沖縄の「富裕層ビジネス」は成功しない?」
まとめ
いかがだったでしょうか?「有効求人倍率」「非正規就業者率」など、沖縄県民が潤わない課題が多くあります。また、そういった「仕事がない」「収入が少ない」といった理由から、「DV発生率」が非常に高くなり、暴力の恐怖により匿名でしか相談ができない。その結果、最終的には「離婚率」の高さに繋がってしまうのでしょう。
さらに、貧富の差に加え、2022年現在も新型コロナウイルスが猛威を振るい、沖縄県の観光にも多大な影響を及ぼしています。観光での収入が減れば、県民の仕事も収入も減ります。沖縄県の観光業への依存は非常に高いのです。
しかし、この問題に関心のある県民の数はかなり少数です。余計なことかもしれませんが、県の現状をしっかり把握し、何が課題なのか?どういった理由なのか?など県民の一人一人が考えていくことが非常に大切だと感じます。目を背けたい現実ではありますが、少しでも未来を良くするために頑張っていきましょう!最後まで見て下さった方本当にありがとうございました!
この記事の執筆者
沖縄県にある高校を卒業し九州地方の医療の大学に進学後、4年初期で途中退学。
その後は関西で自動車製造に従事後、現在は沖縄県でIT企業に勤務しながら個人で「マンゴー生産・販売」や「金融事業」に携わる。
さらに、「アプリ・HPの作成」、「webマーケ」について実践を重ねながら勉強中。
自身の異なる業種の経験から、沖縄県が抱える問題・盛んな業界の両方について、様々な目線で分析し発信しています。