数ある沖縄問題の中でも、最近注目を浴びている沖縄の貧困問題。全国と比較してかなり高いとされる貧困率ですが、その原因はどういったもので何故長くにわたり無くならないのでしょうか。この記事ではそんな沖縄県が抱える貧困問題を沖縄県独自の背景や文化も含めて解説いたします。皆様が沖縄の貧困問題を考えるきっかけになれば幸いです。
沖縄の貧困率は全国一高い?他都道府県とのデータ比較
沖縄の貧困率
沖縄の貧困率は、シングルマザー率と共に全国1位となっています。平成19年の都道府県別貧困率のデータによると、全国平均が14.4%のところ、沖縄は29.3%と2倍以上です。この状況が平成4年から変化がないことも深刻な問題となっています。
また沖縄は生活保護率が2.45%で捕捉率が9.8%となっていることから、受給資格がありながら申請していない人が多いこともわかります。「生活は苦しいが生活保護をもらうのは恥ずかしい。」「車の所有が難しくなる。」などの理由で受給を悩む人が多いのも現状です。
沖縄は非正規雇用が多い
沖縄は非正規就業者率も全国1位です。平成24年の非正規就業者率は全国平均が38.2%なのに対し、沖縄は44.5%となっています。
主な理由は正規雇用が少ないことです。平成27年の正社員・非正社員間のミスマッチ調査では、正社員を希望する求職者の割合が7割なのに対し、正社員の求人の割合は3割という結果が出ました。人手は欲しいけれど、予算に余裕がなく人件費を抑えたいという企業が多く存在しています。
また求職者の中には、自分の都合に合わせて自由に働きたいという理由で、自ら非正規雇用を選ぶ人もいます。これらのことから、沖縄の貧困率が長年の深刻な問題であることがわかります。
■参照元(沖縄県)
沖縄県子どもの貧困対策に関する検討会
最低賃金について
沖縄県の雇用の現状と課題 ~ 課題別分析 ~
日本本土と異なる沖縄の経済成長の過程
取り残された沖縄の経済成長の過程
沖縄の経済成長の過程は、日本本土とは少し異なります。戦争により27年もの間米軍の政権下にあっため、本土が高度経済成長を遂げている間に取り残されていたためです。
昭和47年に日本に返還された復帰直後の沖縄は、生活面や産業面において本土と大きな格差がありました。その経済格差を埋めるため3次にわたる振興開発の計画を実施し、4次振興開発では沖縄が格差にこだわらず地域の特性を生かした発展ができるようにと、格差の是正をなくしています。
この振興により道路や空港などが整備され利便性が向上、人口や企業の増加、観光業の伸び、情報通信の成長などが見られました。しかし、製造業においては思うように育たない結果となっています。
沖縄は経済面で米軍基地に依存
長期間米軍の政権下にあったことで、沖縄には基地依存型の産業構造が成り立っていました。製造業が伸びず、基地の収入に頼ってきたため、抜け出すのが難しい状況だったことがわかります。
復帰直後から比べると、基地依存度は年々減少しています。基地関連収入のデータによると、復帰直後の基地関連割合は15.5%ですが、返還が進むと一気に下がり、平成2年からは横ばい状態が続いていました。平成28年度には5.3%まで低下しており、沖縄県民の総所得も少しずつではありますが上昇しています。
しかし沖縄県庁に続いて人気の就職先が、お給料が良く手当の豊富な米軍基地施設です。今後基地の返還が進めば依存度はさらに低くなりますが、失業率が上がることも考えられます。
■参照元(沖縄県)
沖縄振興のこれまでの取り組み
新たな沖縄振興の必要性について
進学率が低いのにも関わらず、意外にも学歴社会
沖縄は進学率が低い
沖縄の高等学校進学率は97.89%、大学進学率は40.2%とどちらも47都道府県中最下位です。2000年の沖縄の大学進学率は30%を下回っており、この20年で大幅に増加しておりますが依然として進学率は全国最下位が継続してしまっているのが現状です。大学進学希望をしない理由には、所得が低く経済的に難しいことや、通える距離に大学がないことなどが挙げられます。
また母親が進学しなかった家庭はその子供も進学しないという傾向があります。シングルマザーの多い沖縄では母親が進学せずに子供を産んでいることが多いため、結果的に進学率も低くなっています。
沖縄県内の子供たちが学習に対するモチベーションや意義を見出せていないことも問題だと思われます。沖縄はヤンキー文化が根付いていると言われますが、現に小学校高学年から中学生にかけて沖縄の子供たちのヒエラルキーのトップがヤンキーや不良になり、勉強することがカッコ悪いというマインドが現代においても形成されているようです。結果として全く勉強しなくなり、大学進学というタイミングでは進学に価値を見いだせない、今から勉強しても遅いと思い込んでしまうのも原因の一つとしてあるようです。
意外にも沖縄は学歴社会
進学率の低い沖縄ですが、意外にも学歴社会が定着しています。その頂点と言われるのは琉球大学出身の公務員です。私たちの親や祖父母世代は、琉球大学を卒業して公務員になることが沖縄で最も成功することだと考えます。沖縄の公務員平均月収は、令和元年で37万4000円となっており、貧困とは縁のない印象を受けます。現に全ての職業を考慮した沖縄県民の平均月収は23万円程度ですので公務員の月収は魅力的に見えるのでしょう。
高校中退や若くしてシングルマザーになったなどの理由で学歴が低い人は、就業できる場所が限られており最低賃金からのスタートがほとんどです。沖縄の最低賃金は令和元年で790円となっており、この時給でフルタイムで20日間働いたとしても、手取りの月収は10万円ほどです。思いきって夜の仕事に飛び込んでも、10万円台後半が平均と言うのが現状です。またシングルマザーには子育ての問題が絡んできますので、生活を立て直す機会が中々得られず、貧困のループを招いてしまうのが沖縄の現状です。
沖縄では公務員の仕事が人気
このような理由から沖縄では公務員の仕事が人気です。2019年の公務員受験ランキングでは、沖縄は10.9倍で全国1位となっています。公務員を希望する人の中には、まず民間企業に就職し、働きながら試験を受け合格したら退職するという形も見られます。年収の低い地域ほど、安定し公務員を希望する傾向があります。
■参照元(沖縄県)
美ら島沖縄・給与情報
沖縄県職員採用試験実施状況
高い離婚率や若い出生率
沖縄が貧困の理由には、高い離婚率と若い出生率も深く関係しています。平成27年の離婚率のデータを見ると、全国の平均が1.81%なのに対し沖縄は2.53%と、約1.4倍です。沖縄は離婚に対してマイナスなイメージが少なく、周りの人も子育てに協力的です。結婚に踏み切りやすく、離婚に悩んだ時も背中を押してくれる環境が離婚率の高さに繋がっていると言えます。
また沖縄は若い年代での出生率が高く、平成25年のデータによると10代での出産の全国平均が1.3%なのに対し、沖縄は2倍近くの2.5%となっています。娯楽が少なく出会いが限られていることが、若い年代での結婚や妊娠のきっかけになるのではないでしょうか。離婚率が高い理由と共通しますが、子育てに協力的な環境があるからこそ若い年代で出産する覚悟もできるのかもしれません。
離婚率と若い出生率の高さから、沖縄にはシングルマザーが多いことがわかります。若い年代で結婚や出産をすると、進学や就職ができず資格の取得も困難です。離婚した時に収入の高い仕事に就きにくいことが、貧困の理由のひとつだと言えます。
■参照元(沖縄県)
母子保健の主な統計
沖縄県男女共同参画の状況について
脆弱な産業構造(あまりにも多いサービス業)
沖縄の産業の8割はサービス業
沖縄は観光をメインとするサービス業や小売業などの第3次産業の割合が大きく、平成27年の産業割合のデータでは84.2%と全体の8割以上を占めています。本土復帰後、航空アクセスの向上や観光施設の増設、テレビや雑誌などの宣伝効果で観光業が上昇したのが主な理由です。
沖縄の大部分を占めるサービス業は、非正規雇用が多く賃金が低いのが特徴です。長年勤めてもキャリアアップに結び付きにくいので、貧困に悩む人にとっては魅力のある職種とは言いにくいでしょう。しかし他の職種が少ないため、結果的にサービス業を選ぶことになるのが現状です。
製造業の低下
観光業が上昇する一方で、製造業などの第2次産業は低下しています。産業割合では第3次産業の次に多くなっていますが、比率は14.5%と全国平均の26.2%より1割低い結果となっています。製造業の割合が少ない理由は、金属加工など製造の基盤であるサポーティング産業がもろくなっていることです。量産化が難しく、本土から離れているため物流のコストもかかります。
都道府県の産業の割合を見た時に、製造業の割合が高いと所得が高く、反対にサービス業などの割合が高いと所得が低くなる傾向があります。
■参照元(沖縄県)
平成29年度沖縄県観光産業実態調査事業報告書
沖縄県・産業の内訳
沖縄の貧困についてどう思っている?アンケートを実施しました
<ペンネーム:かなさん>
沖縄の貧困問題は、随分前から取り沙汰されている。離婚率の高さ、子供の貧困率、失業率の高さなど、いずれもワースト一位であるにもかかわらず、ずっと放置されてきていると思う。問題は山積みなのに、何も解決策を講じようとしないことが大きな問題だと思う。県の将来を担っている子供達にそのすべてのしわ寄せが降りかかっていて、このままでは結局、同じことの繰り返しでいつまでたっても貧困問題の解決へのいとぐちが見つからない状態になってしまう。その原因として、沖縄自体が、戦後から社会構成が貧困を引きずってきて現代に至っていると思う。貧困家庭が多いことで、その負の連鎖が世代を超えてもひたすら繰り返されていると思う。貧困から脱却するには、整った教育制度、そして就職する人たちを受け入れる安定した企業などをまず整えなければ始まらない。それがいつまで経っても放置された状態のままなので負の連鎖をいつまでたっても断ち切ることができず貧困が繰り返されてしまうと思う。解決策としては、抜本的な教育改革を行うことだと思う。子供に質の良い教育を一律受けさせることによって仕事を得たり、また企業力のある会社の起業などを始める人材が育っていくのではないか。そのためには、まず子供の教育を行う場である学校の教員の質の向上、沖縄大学での教育者養成プログラムの整備が急務であると考えます。貧困問題は、子供の未来を確保することから始めなければ意味がないと言えます。<ペンネーム:N Yukiさん>
沖縄の経済の構成について問題があると私は思っています。それが起因して貧困問題も発生しているのではないかと考えます。また他にも出生率が高いこと、沖縄の気候や風土から連想してしまうのですが、何も考えずに子供もうけてしまう。そしてこどもの学費に投資できなくなり、その子供の一人あたりの経済的な生産性が悪くなるという風に負のスパイラルが生まれてしまうのではないかと考えます。また、 沖縄人を全員否定するわけではないが、県民性も多くあると思います。米軍基地があり、観光材料が豊富なので、学がなくてもそれなりに働ける人が県民人口や経済規模的に多いと思います。それはある意味、生活が安定する、なんとかなるといった甘さが出てきてしまい、最低限度とまでは言えないがそういった生活を送ってしまうのではないかと思います。解決策としては国から出ている補助金を概ね減らすべきではないのかなと思います。貧困問題があるのに減らすのか?という風にもとらえかねますが、戦後沖縄を特別扱いしてきた結果だとも考えられると思います。やはり何かと優遇されているのも事実です。そういったことから、学力レベルが低いまま子供が成長してしまう。沖縄の若者は、東京の学生が起業をどんどん果たすように、観光に頼り切らない何か新しい産業も今後生み出さないといけないと思います。<ペンネーム:soujoさん>
沖縄経済の問題をマクロ的な視点考えると、沖縄県内にまともな賃金を支払う企業が少なくワーキングプアの夫、会社でストレスを貯めてDVをする夫が多いのが原因だと思います。米軍の問題があるにせよ、沖縄県の産業育成政策が長年成果をあげていないこと、東京の中央政府が沖縄に投資する莫大な額の財政支援がいったい何に使われているのか不透明で沖縄県民に還元されないことも大きな原因の1つでしょう。色々な原因はありますが、今ここで1つだけ選ぶとすれば沖縄県(あるいは各市町村)のこれまでの政策があまり良くなかったのが一番の原因ではないでしょうか。まとめ
沖縄の貧困問題は、戦争が背景にある歴史や地域の特徴など様々な要因が重なっています。全ての要因が他の要因に関わっていることから、すぐに解決することは難しいですが、第一次産業や第二次産業の割合を増やすことが今後の課題ではないでしょうか。生産性が上がることで沖縄県民一人ひとりの収入や待遇が上がり、貧困や格差のない環境を作ろうとする意識が重要です。