離婚率が日本一高く、シングルマザーもかなり多いと言われる沖縄。そんな沖縄はなぜシングルマザーが多いのでしょうか。この記事は沖縄にシングルマザーが多い理由を歴史的な背景や文化的な風習を交えながら丁寧に解説します。最後には沖縄県内のシングルマザー向けの補助制度も紹介しているので、ぜひお役立ててください。
沖縄は日本1シングルマザーが多い?その理由は?
沖縄のシングルマザー率は全国平均の2倍
沖縄のシングルマザー率は全国で1位となっています。
平成30年に沖縄県が調査したひとり親世帯のデータでは、沖縄県内の世帯数591,388世帯に対し、母子世帯は28,860世帯となっています。出現率は4.88%です。
少し古いデータになりますが、平成23年の母子世帯出現率は全国平均が2.65%なのに対し、平成25年の沖縄の母子世帯出現率は5.46%となっています。集計した年は違うものの、約2倍の差があり、沖縄県のシングルマザーが相対的に多い事実が確認できます。
■参照元(沖縄県)
平成30年度 沖縄県一人親世帯等実態調査報告書 概要版
沖縄のシングルマザー率の推移はやや減少傾向
母子世帯の出現率を平成15年から平成30年の推移で見てみましょう。以下は平成30年度 沖縄県一人親世帯等実態調査報告書のデータになります。5.39%から5.46%だったものが平成30年には4.88%とやや減少はしているものの、大きな変化は見られず高い水準が継続しています。
調査年度 | 世帯総数 | 母子世帯数 | 母子世帯の出現率(%) | |
---|---|---|---|---|
平成15 | 2003 | 474,797 | 25,604 | 5.39 |
平成20 | 2008 | 516,727 | 26,846 | 5.20 |
平成25 | 2013 | 547,288 | 29,884 | 5.46 |
平成30 | 2018 | 591,388 | 28,860 | 4.88 |
また沖縄県内の地域別で見ると、本島中部は平成25年の6.56%から平成30年には5.50%と減少しており、宜野湾市や浦添市、そして沖縄市などを有する沖縄県の中部地方は沖縄県全体の平均や全国平均と比べるとかなり高いことがわかります。あくまで推察ではありますが、このような背景として中部地方には米国基地が集中しており、アメリカ軍属の方との婚姻やそして沖縄での任期を終えたことによる帰国とそれに伴う離婚の機会が多いことなどが考えられそうです。
沖縄は児童扶養手当の受給率が1位
沖縄県は生活保護率も高く全国平均5位ですが、児童扶養手当の受給率は1位となり、約93%の人が受給との結果を示しております。児童扶養手当とは、何らかの理由でひとり親になった家庭に、児童の安定と自立促進のため支給される手当です。このデータからも沖縄県内のシングマザーが置かれる経済的な状況な状況は厳しく、様々な支援制度が必要であることが考えられます。
■参照元(沖縄県)
平成30年度 沖縄県一人親世帯等実態調査報告書
シングルマザーが多い背景は低年齢での出生率と高い離婚率
ここまでは沖縄にはシングルマザーが全国と平均して多く、高い母子世帯出現率が継続していることが分かりました。では、なぜ沖縄はこれほどまでにシングルマザー率が高いのでしょうか。その背景となるのが、次の3つです。
低年齢での出生率が高い
沖縄は低年齢での出生率が高く、10代の妊娠や出産の全国平均が1.1%なのに対し、沖縄は2倍以上の2.6%となっており、低年齢での出産がかなり多い地域です。
また、出生率が高い理由の1つが子供を育てやすい環境にあります。沖縄には「子供は宝」という考えが受け継がれており、親だけでなく両親や祖父母、近所の人も一緒になって子育てする風習があります。出産や育児に不安があっても、周りのサポートがあるので安心して子供を産めるのが特徴です
また沖縄に限らず田舎に共通して言えることですが、娯楽が少なく出会いも限られているため、低年齢での結婚や出産に繋がりやすいのではないのでしょうか。幼なじみや同級生など昔からの知り合いだからこそ安心して結婚に踏み切れるという点も大きいですね。
離婚率が高い
他の背景としてあげられるのが、沖縄の離婚率の高さです。平成13年以降、沖縄の離婚率は横ばいとなっており、全国の離婚率の平均が1.81%なのに対し、沖縄は2.53%と約1.4倍となっています。 沖縄の離婚率が高い原因としては、離婚に対してマイナスなイメージがないことがあげられます。最初から離婚するつもりで結婚する人はいないと思いますが、沖縄独特の「なんくるないさぁ」の精神であまり深く考え込みすぎない性格が表れているのではないでしょうか。
周りの協力が大きく、子供の面倒を見てもらいながら働くことも可能なため、離婚で悩んだ時にも決断しやすい環境だと言えるでしょう。
男性優位な社会やつながり
この時代においても、沖縄県はどちらかと言えば、というよりもかなり男性優位な社会です。この男性優位は職場ではなく、家族・親戚といったより身近なつながりの中で根付いています。
例えば、墓は長男だけで継ぐものという考え方が浸透していて、女性はいずれ嫁いで血族から出ていくものだと、親族一同から当てにされない傾向が沖縄社会全体にあります。そのつながりから女性軽視(親族から当てにされない)が発生、しがらみを断とうとするために、外に出てしまう女性が沖縄には一定数いると、県内大学教授は語っています。
そのような理由で外に出た女性は、生活が苦しくても周りに頼れる人がおらず、貧困のループにはまってしまうと考えられます。
上記はあくまで一例で、シングルマザーになる理由は人によって千差万別だと思います。ここで主張したいのは、シングルマザーになる理由は、個人の問題だけではなく、社会やシステムにも問題があるという事です。沖縄のシングルマザー問題について議論する際には、このような前提条件も考慮する必要があると筆者は考えております。
■参照元(沖縄県)
母子保健の主な統計
平成 30 年度の沖縄子供の貧困緊急対策事業 第2回交付決定(若年妊産婦の居場所)について
平成28年度 沖縄県男女共同参画の状況について
シングルマザーに追い討ちをかける沖縄県内の高い失業率
沖縄のシングルマザーにさらに追い打ちをかけるのが、高い失業率です。沖縄はシングルマザー率と離婚率に続き、失業率も全国1位です。非正規就業者の割合は全国平均が38.2%なのに対し、沖縄は44.5%。1人当たりの所得が200万円未満の割合も、全国平均が9.4%なのに対し沖縄は24.7%と最下位になっています。
主な原因は、沖縄には安定した収入が見込める仕事が少なく最低賃金も少ないことです。沖縄のメイン産業である観光業は、繁忙期と閑散期の差が激しいので、常に人材を抱えることが難しいと言われてます。そのため、正規雇用ではなく派遣社員やパート・アルバイトなど非正規雇用がどうしても増えてしまい雇用が不安定になってしまいます。男性でも正規雇用が難しく、仕事を辞めたとしても次の仕事が見つからないのが現状です。これは離婚率にも影響します。収入が少ないため結婚生活の維持が難しく、離婚に至るケースも少なくありません。
このような雇用・経済的な援助も沖縄のシングルマザー問題を考える際にとても重要になります。
■参照元(沖縄県) 配偶者に対するDV率が高いことも、沖縄のシングルマザーが多い原因のひとつです。平成25年の配偶者暴力相談センターのDV相談件数は、人口10万人に対し全国平均が96%、沖縄は175%と2倍近くになっています。 あくまで筆者が感じることですが、沖縄の男性は独占欲が強いという傾向にあるように思えます。次第に束縛が強くなり、暴力に訴えてDVに発展する傾向も少なくありません。もしくは、先程の男性優位な社会から生まれる女性軽視の傾向が、沖縄の高いDV発生率にも表れている可能性もあります。 また、沖縄は家族の絆が強い一方で、母親がシングルマザーだったために幼少時代に寂しい思いをした子供も多いのではないでしょうか。女性は子供ができると強くなりますが、男性は出産を経験していない分女性より幼い部分を持ったままの人もいます。その寂しさからDVに走る男性も多いため、DVの相談件数が高くなるという結果に繋がります。 DVは発生してしまう理由も千差万別だと思います。DVに困っている人や心配な方はすぐに内閣府のDV相談プラスに相談することをおすすめします。 ■参照元(沖縄県) 沖縄県では生活が厳しく悩んでいるシングルマザーを支援するため、多くの対策が導入されています。生活面での経済的な援助だけでなく就業面でのサポートも手厚いため、新しいことにも挑戦しやすいのが魅力です。 沖ひとり親世帯の生活をさまざまな面から支援する福祉団体です。生活や子育てに関する無料相談窓口や無料資格講習会、貸し付けや給付金など幅広く対応できます。経済面だけでなく、精神面でも不安を抱えるシングルマザーにとって、沖縄母子寡婦福祉連合会は心強い存在になるのではないでしょうか。 養育費に関する問題も専門の職員や弁護士に相談が可能です。 無料の講習会の中には、介護職、パソコン講習、調剤事務講座などもあり、自分に合った職業を見つけたり、経験したことのない分野にも挑戦できたりという強みがあるのも魅力です。 低所得のひとり親世帯に、認可外保育施設の利用料を補助する制度です。待機児童となったひとり親世帯の児童に月額33,000円を上限として補助します。支給の対象となる要項があるため、お住まいの市町村のものを詳しくはご確認ください。 ひとり親世帯の子供の人数に応じた手当が支給されます。子供が18歳に達した最初の3月までが対象です。手当の認定請求は、住所地の市役所または町村役場に必要書類を提出して、県や市の審査を経て認定を受けることになりますので、詳細はお住まいの市町村、もしくは沖縄県のwebサイトを参考にしてください。 ひとり親世帯で医療保険に加入している家庭を対象に、医療費の助成を受けられます。子供が18歳に達した最初の3月まで、母子ともに対象となりますが、生活保護を受けている家庭は除外されるなどの要項があります。 ひとり親世帯の母親や父親が、就労に繋がる教育訓練講座を受講した際に支援する制度です。受講が終了した時に費用の60%を支給します。対象の講座が指定されているので、事前に確認が必要です。 ひとり親世帯の母親や父親が資格習得のために1年以上養成機関で修業した場合、給付金を支給します。対象となる資格は、看護師や介護士、保育士、美容師などさまざまな種類があります。 ひとり親世帯の母親や父親が資格習得のために1年以上養成機関で修業した場合、給付金を支給します。対象となる資格は、看護師や介護士、保育士、美容師などさまざまな種類があります。 沖縄県webサイト・令和3年度高等職業訓練促進給付金の受給希望者の募集について ひとり親世帯の母親や父親が養成機関で資格の取得を目指す際、入学準備金として50万円、就職準備金として20万円を貸し付けます。取得した資格を活かして5年間就労した場合は返済免除となります。 ひとり親世帯の親や子供が高校卒業認定試験を受講した際、受講終了時に受講料の20%を支給します。また合格した際には40%を支給します。 厚生労働省webサイト・高等学校卒業程度認定試験合格支援事業について” 沖縄のシングルマザー率が全国1位であることは、さまざまな要因が重なった結果だということがわかりました。それぞれの理由が他の理由の要因にもなっており、地域独特の性質もあるため、長年続いている現状をすぐに改善するのは難しいかもしれません。しかし、シングルマザーの家庭に支援することで貧困の生活を向上させることは可能ではないでしょうか。 沖縄のシングルマザーは低年齢で結婚や出産をした人が多く、資格を持っていない人も多く見受けられます。支援を利用して手に職をつけることで、現在よりも少しでも豊かな生活を目指すことが大切です。 こちらの記事もおすすめ:【最新版調査】沖縄の離婚率は全国1位?沖縄県の離婚率が高い理由を解説
令和2年7月の雇用状況
沖縄が高いDV率も原因に
平成28年度 沖縄県男女共同参画の状況について沖縄県内のシングルマザーをサポートするための制度や補助金
沖縄母子寡婦福祉連合会
認可外保育施設利用料補助
児童扶養手当の支給
ひとり親家庭への医療費助成
自立支援教育訓練給付金
ひとり親家庭高等職業訓練促進資金
高等職業訓練促進給付金
高等職業訓練促進資金貸付金
高等学校卒業程度認定試験合格支援事業
まとめ
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