全国と平均して高いと言われている沖縄県の子どもの貧困。その実態はどの程度なのでしょうか。本記事ではそんな沖縄県子どもの貧困について、解説をさせていただきます。
なお、本記事では『沖縄子どもの貧困白書』という書籍を参考に執筆しております。
■参考書籍
沖縄子どもの貧困白書
徐々に明らかになる沖縄の子どもの貧困。貧困当事者の声を聞きましょう。
沖縄県在住・女性のストーリー①
社会的養護経験者の彼女は家庭的な困窮もあり、1才で里親、小学4年生で児童養護施設での生活をスタートしました。彼女自身、自ら選んで「社会的養護」や「子どもの貧困」の当事者になった訳でなく、なぜ社会へ感謝をしなければならないのかという違和感を感じていたようでござます。
児童養護施設に入ると空気を読むことが当たり前になり、認めてもらえなければ、自分の存在価値がないと考えるようにもなってしまった。高校生になると携帯電話が持てない、外出許可がないと友人と遊びにいけない、流行の服が買えないなど自分の環境が恥ずかしく惨めなものと思うようにもなった様です。その結果、自分より惨めなことや人に同情したり、差別をしたりして今の自分の状況を無理に感謝すること自己を保つようになってしまいました。
彼女は自ら望んで「子どもの貧困」の当事者になったわけではなく、他の人と同じように親に愛され、好きなことを経験する権利があり、足りなかった経験や愛情を自分のせいにする必要はなく、ましてや感謝する必要はないと感じています。出会った人や社会に感謝するのではなく、「守られるべき権利が守られていない」と主張できる社会があるべき姿だと彼女は考えています。/p>
沖縄県在住・女性のストーリー②
子ども食堂スタッフの女性です。幼少期は車上生活やライフラインが断たれた生活、いじめなどを経験、頼る相手もなく、心から泣く場所さえなかったと言います。
母親のことが大好きでしたが、母親は子どもにあまり関わらず、常に知らない男と一緒に。父親が変われば住む地域も変わるという経験をしたと言います。小学5年生の頃、母親の彼氏の暴力が原因で児童養護施設へ行くことになりました。当初は自分だけが暴力を受けており、母親の幸せのためならと何年も耐え続けていたが、妹に暴力を振われた時に、周囲に助けを求めて児童養護施設に入所しました。
施設での暮らしはとても温かみのあるもので、親に捨てられた子、暴力を受けた子など様々な理由を抱えた子どもたちが入所している中、徐々に心を開き、仲良くなっていったと語ります。施設での生活は多くの規則があり大変なものだったが、本気で怒り、抱きしめてくれる先生の優しさに触れ、保育の道へ進め決意をして高校時代にアルバイトで稼いだお金は進学のために貯金をしました。
施設に出てからの生活は、大学とアルバイトとの往復でとてもハードだったようです。親の援助がある友人と自分を比較して羨む気持ちもあったが、このような苦しく悲しい経験があるから、誰よりも人の痛みが分かり、誰かのために動けているのだと実感したと語ります。
東日本大震災、熊本地震の際には災害ボランティアとして現地に向かい、子どもたちの心のケアや居場所づくりに従事したようです。このボランティア活動もあり、現在は子ども食堂のスタッフに。家族との繋がりが希薄化している子どもたちのために居場所づくりを行っています。ゆくゆくは自らの出身である児童養護施設の職員として働きたいと考えているようです。
沖縄県の子どもの貧困。特に深刻なのは女性の貧困
沖縄県に残る男性優位が貧困の原因になる可能性も
沖縄は男性優位な社会と言われています。言い換えるなら女性軽視の傾向がなきにしもあらずということです。男性、特に長男は実家の墓を継ぐこと、女性は嫁いでしまうので親族一同にあてにされてないことがあるようです。その結果、沖縄県の各エリア(特に離島、北部)に住む女性は地元のしがらみを経って都会(那覇、浦添)に出る→実家は頼りにできない→都心エリアだと近所・地域との繋がりが薄い→更に頼りになる人がいなくなる。→生活資金獲得のためにブラック労働、水商売などに悪い方向にループという流れになってしまうようです。
つながりがあるから貧困ループに陥る女性も
たとえ夫が経済的に豊かだとしても、その振る舞いが出たらめだと、妻が貧困に陥ることは十分にあります。
また、10代でシングルマザーの方は親や祖母が同じ境遇、若くしてシングルマザーの可能性が高いです。そのため生活の仕方・やりくり方法が分かってしまっており、何よりシングルマザーは普通という価値観ができ上がっているので、シングル・比較的貧しいことに慣れきっているようです。
まとめ
以上、沖縄県子どもの貧困についての解説記事でした。次回以降の記事でも沖縄の子どもの貧困について紹介をして参ります。
この記事の執筆者
沖縄県にある高校を卒業後、都内の大学に進学、ベンチャー企業やコンサルティングファームを経て、現在は沖縄を拠点に活動するフリーランスWebマーケター。琉球大学大学院で沖縄経済についても研究中。マーケの仕事と沖縄経済研究を専門にしています。 webマーケは全般対応可能でpythonや統計(計量経済学)を組み合わせた自動化や定量分析・運用が差別化ポイント。研究テーマは「沖縄経済」「生産性」「計量経済学」のあたり。沖縄の社会問題に関心があり、歴史や制度的な問題が複雑で実態が掴みづらい沖縄県が抱える問題をなるべく数字を出して発信しています。