島嶼学で考える沖縄②「ネットワークと島嶼経済の自立的発展」

島嶼学で考える沖縄②「ネットワークと島嶼経済の自立的発展」

島嶼学 沖縄

皆さんは、「島嶼学(Nissology)」という学問をご存知ですか?島嶼学は1994年に沖縄から生まれた比較的新しい学問になります。そんな島嶼学について前回から複数回に分けて紹介をしております。今回は島嶼を構成するネットワークや観光・政治経済についてです。

島嶼社会経済のネットワークについて

ネットワークの定義

そもそもネットワークの定義とは何なのでしょうか。ネットワークは「ヒト、モノ、カネ、エネルギー、情報生活インフラを相互に繋ぐ人為的な仕組み」と定義されます。

また、ネットワークには「スター型」「長距離型」など様々なモデルで構成されることが多いのですが、島嶼においては「外部経済性」が生じることから「離島間ネットワーク」よりも「本島・離島間ネットワーク」が真っ先に構築されます。

ネットワーク集積度

島嶼地域間のネットワーク集積度は様々な要因に依存しています。以下にあるのはあくまで一例ですが、順を追って見てみましょう。

地理的・文化的要因

地理的近接性は島嶼間をリンクする上で最も重要なネットワーク要因になります。沖縄の場合、県内島嶼間ネットワークが最も集積度が高いと言えます。また、ネットワーク集積度は文化・歴史・政治・行政、経済、言語、血縁関係にも左右されることも多いです。例えば奄美大島は鹿児島県内の行政管轄下にあるが、文化的には沖縄と繋がりが深いです。また、ハワイ群島も沖縄からの移民による「琉球文化」の遺産が根付いており、沖縄にとってネットワーク集積度が高い外国の島々となります。

経済的要因

島嶼経済社会がグローバル経済に組み込まれるにつれて、経済、特に貿易のネットワークが重要になってきました。「国際貿易への相互依存度」という指標では、フィジーやパプアニューギニアのGNPにおける貿易の比率が80%超えるなど貿易依存度がかなり高い傾向があります。また南太平洋諸島間の相互貿易は10%前後と極めて少なく、その理由として島々の主力輸出品は農産物、魚介類、鉱物資源など競争的で補完性がほぼ無いことがなど挙げられます。

旧・現宗主国の優遇措置に依存した「垂直分業型貿易」が主で完成財を相互に取引する「水平型分業貿易」とは異なることも特徴です。また、高い貿易依存度は高い貿易ネットワークを意味せず、貿易よりもODAや移民送金、観光収入などからの収入が多いので、それらの指標が国際金融や市場の変化の方が島嶼にとっては重要になってきます。

政治同盟と社会経済政策

島嶼経済社会がグローバル経済に組み込まれるにつれて、経済、特に貿易のネットワークが重要になってきました。「国際貿易への相互依存度」という指標では、フィジーやパプアニューギニアのGNPにおける貿易の比率が80%超えるなど貿易依存度がかなり高い傾向があります。また南太平洋諸島間の相互貿易は10%前後と極めて少なく、その理由として島々の主力輸出品は農産物、魚介類、鉱物資源など競争的で補完性がほぼ無いことがなど挙げられます。

旧・現宗主国の優遇措置に依存した「垂直分業型貿易」が主で完成財を相互に取引する「水平型分業貿易」とは異なることも特徴です。また、高い貿易依存度は高い貿易ネットワークを意味せず、貿易よりもODAや移民送金、観光収入などからの収入が多いので、それらの指標が国際金融や市場の変化の方が島嶼にとっては重要になってきます。

情報ネットワーク

情報通信技術(ICT)は、資本や土地を前提とする経済成長を無視する島嶼経済における「距離の暴虐」「規模・範囲の不経済」「立地の不利性」を克服し、産業創造分野で都市部と同じ土俵に立てる可能性を持つ、島嶼にとっては正に希望です。

一方、島嶼地域インターネット普及率は全体的に低く、情報格差が課題となっている二面性を持ちます。
バミューダ、ケイマン、バルバドスはICT技術をフルに活用して世界トップクラスの一人当たりの所得を実現しているエリアもあります。ITの活用と併せて金融サービス、そして税制の側面(タックスヘイブン)などが寄与してGDPを増加させるなど工夫次第で島嶼の経済を活性化させることも可能です。

沖縄におけるネットワークの実例と構想

ウチナーンチュ・ビジネスアソシエーション

戦前の沖縄は食料需給の調整等の問題があり、限られた土地資源と人口増加のバランスをうまくとるために海外移民により人口規模を経済の持続可能な水準に保ってきました。戦前の沖縄人口は50万人規模で一定規模に維持され、沖縄から海外へ移住した人の数は子孫を含めて40万人にも及びます。移住先で成功した沖縄系移民の送金で沖縄の貿易赤字が相殺された時期もあったほどです。

海外「ウチナーンチュ」が国境を越えた組織づくりも活性しており「世界のウチナーンチュ大会」の開催や「世界ウチナーンチュ・ビジネス・アソシエーション(WUB)」といったものあります。また、世界に1億人いるとされる空手愛好家を空手の聖地「沖縄」をハブしたネットワークする構想も検討中で、沖縄のブランディングに寄与することが期待されています。

情報(ICT)ネットワーク

情報通信産業は観光に次ぐ沖縄のリーディング産業とされています。。沖縄IT津梁パークなどのハード面でのインフラ整備や企業優遇措置を実施し、さらに近年では量的な成長に加えて質的にも変化をしてきました。低スキルのICT技術(コールセンターなど)から、最近は顧客サービス、ソフトウェア開発、コンテンツ制作、BPO、データサービス、バックオフィス、金融サービスなど多角化してきたのも事実です。特にソフトウェアと通信・ネットワーク産業が急成長して、コールセンター会社の数を大きく上回るようになってきて成長もみられます。

このように高スキルのICT技術に比重が移っているというデータもありますが、これは果たして本当にそうなのでしょうか。令和元年度情報通信産業振興計画 実施状況報告書 を見ると、コールセンターが約60%、ソフトウェア業が10%、コンテンツ制作業が約5%と、情報サービス業の内の多くはwebサービスの受託開発、BPOとなり、これらは一般的に低スキルであるとされ、少なく見積もっても80%が低付加価値職種である可能性もあります。

実際に情報通信産業の全国平均月収:34.9万円に対して、沖縄は22万円と全国平均の63%程の所得となっています。(厚生労働省の賃金構造基本統計調査より)ネットワークや産業クラスター形成の際に、高付加価値なサービスが生まれるような仕組みも重要だと考えるのは筆者だけなのでしょうか。

物流ネットワーク:位置の悲劇から位置の優位へ

2009年にANAが国際貨物基地を那覇空港に開設して以来、沖縄はアジア太平洋を結ぶ貨物ハブとして機能しています。羽田や関西国際空港から積み込まれた貨物を那覇空港で仕分けして、香港やバンコクなどアジアの主要都市で1日で配送する物流システムが稼働しています。オペレーションなどの問題は抱えているが期待は大きいです。

そんなハブ空港としての実は一度も黒字化しておらず、貨物専用機は昨年の3月から運休が継続しています。航空各社と貨物スペース利用契約を締結し、各社スペースを活用することで効率的に貨物の輸送を実施する新モデルや、県産品のEC販売の需要増加による輸出の拡大が期待されています。

島嶼経済の自立的発展を求めて-沖縄島嶼の振興策と自立経済構築への挑戦-

沖縄振興策の実績と評価

現在、沖縄は本土復帰後現在 5 期目の振興計画実行中にあります。「沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法 律(復帰特別措置法)」「沖縄開発三法」と呼ばれる「沖縄振興開発特別措置法」「沖縄開 発庁設置法」「沖縄振興開発金融公庫法」が施行されていて、そこいには沖縄の諸制度を本土並みにする 移行期の措置が盛り込まれております。

開発法には「離島とは沖縄名にある島の内沖縄島以外 の島…」とあり、振興開発の内容は返還軍用地を含む土地利用、産業振興、教育、人材育 成、医療、インフラ、環境保全等多岐に渡っていて、それを特別措置を通じて行うことが目的で、国の直轄 事業、補助事業、税、金融、開発特区、離島の交通費補助、高齢者福祉の増進、小規模学 校の教育充実、旅館の減価償却特例等があります。

沖縄開発法は 2012 年 3 月失効し新振興法 として延長されております。そこでは開発という文字は消え、格差是正ではなく「自立的発 展」が謳われています。第 5 次振興計画は県審議会の案をそのまま踏襲したものとみていて、国の審議会は形がい化し解消してもよいと思われるがそのためには沖縄振興特別措置 法自体を廃止する必要もあります。

沖縄優遇策とみられるこの「差別的」な暫定法を沖縄県側 から廃止し本土並みの「振興策」を要求する動きは残念ながらありません。沖縄は国の「振興策の罠」には まっているともいえます。その限りでは自立経済の構築はおぼつかないのが現状では無いでしょうか。最近まで続いた人口の社会増 が、本土の人手不足や、正規雇用の機会上昇により減少に転じています。沖縄独自の人口増 計画は「見果てぬ夢」に終わる懸念もあるので、人口減少を前提にした経済社会システムの再 構築を地域社会包摂プロセスを経て議論しておく必要もあるのでは無いでしょうか。

また、最近まで高失業率の解消が最大の振興課題でありました。改善の中身は低賃金の非正規雇用 者の増加です。雇用の質の劣化は、全国一の離職率を招き、生産性の向上につながる 「職場での技能蓄積」を阻害することにつながります。

これまでの経済的成長を支えてきたエンジンは GIP の 40%近く占めてきた公的支出、観光収入、基地関連収入です。分野では現在 8 割 近く占める第三次産業の4割近くをサービス産業が占めていますが、観光関連サービス産業就 職者の 7 割が低賃金の非正規雇用です。2000 年をピークに付加価値生産性は低下しています。観光関連産業はミスマッチの多い過剰雇用で持続性が疑われているのが現状です。

政策的に成功したの は ITC 産業で、県外企業の進出が急増し「距離の暴虐」を克服しています。また、国際航空貨物物 流も特区が新設され期待がかかっています。沖縄は全国最下位の所得ではあるが OECD 加盟 34 か国中では 23 位前後に匹敵しています。1人当たりでは、人口 140 万程度の小島嶼地域でこれだけの水準を維持している独立国はないので、すでにハイパフォーマンスとも言えます。

一方で所得の向上と裏腹に食生活、ライフスタイルの変化もあって沖縄が世界に誇る 「長寿ブランド」に危険信号は出てしまっています。特に戦後世代は全国平均を上回る死亡率を示 し、長寿再生に向けた「ポピュレーションアプローチ」と称する新たな戦略が必要ではないのでしょうか。

沖縄・経済自立への挑戦

沖縄は琉球王国誕生以来独自の経済圏を構築しています。 日本復帰後も沖縄独自の「道州制」を目指している中で自立経済へのインスピレーションは沖縄の未来を指し示す羅針盤の役割を果たすのではないでしょうか。

現在の沖縄経済は日本のどの地域よりも持続可能性の低い基地収入と政府の政治支 出に依存しているため自助努力による経済基盤を確立する必要があると考えます。また失業解消には 県内での職場創造が最も効果的で、沖縄は他の地域に比べ唯一人口増加している地域であることを誇るべできです。そして世界経済をけん引しているアジアに隣接している事から日本のアジアへのフロ ントランナーとしての優位性を活かすなら、先に挙げた課題をクリアし自立経済構築は実 現可能であるとのコンセンサスになるでしょう。

一方で基本方針には共生社会の実現と同時にグロ ーバル経済の進展の中での経済自立を構築するには地方分権を確立して自立的な政策決定 に基づく移輸出型の競争的産業の育成が不可欠です。しかし「共生=共同 体」、と「グローバル化=国際市場競争」とどう折り合いをつけるかは今のところ不明瞭で、自立政策の目安となる明確な定義もなく、自立経済の程度を測る数値目標が全く示されておりません。

もしも経済自立論がナンセンスであれば、生き方の根本にかかわる「自律・自 尊の精神」を放棄したことになってしまうのでは無いのでしょうか。国への依存度をいかに下げてゆくかか沖縄に限らず日 本の地方県及び島嶼県の自立経済確立へのカギを握っていてそれには大幅な発想の転換が必要だと考えます。

島嶼地域において経済的自立を推進する最大のエンジンは観光産業であることに間違いはありません。県内総生産 の観光収入の割合は増大傾向にあるが 2018 年には 1000 万人の大台に乗りました。人数ではハワイを追い抜いているが経済全体へのインパクトは半分以下なのは由々しき事態であります。

ハワイの平均滞在日数は沖縄の倍以上であることでおおよそ説明が可能で、観光産業の質 である付加価値の面で後れを取っています。同じ質のまま観光客が増えてもハワイとの観光 収入の差は大きくなる一方です。ハワイでは観光税や観光宿泊税、売上税等徴収し観光インフラ整 備に回すなどかなり工夫をしています。沖縄では観光客数を伸ばすために免税にしたりしており、観光が地域住 民の福祉インフラ整備にどれほど貢献しているかは疑わしいのが現状です。ハワイのコンベンションセ ンター建設には観光関連税を使っていてます。

また、沖縄の県民の約 8 割が観光振興の役割を重視している が観光発展により生活が豊かになるとして感じているのは 38%というデータもあります。沖縄県の公表では 観光収入 7千億円のうち 7割程度が県内の賃金、利潤、利子、税収入などの付加価値創出に回っているとしているが、同じ手法で計算した付加価値総額は総供給の 4 割程度である と算出されています。

免税商品、移輸入商品、県外資本による利益の本土転移、サービス産業で の非居住者労働の急増を考えると県外への所得漏れが大きいとみるのが常識的な見方です。観光 サテライト勘定作成により、観光支出に対しての項目別県内付加価値額を公表し沖縄観光 の弱点を洗い出す必要が先ずはあります。

基地収入を考えると、県内総生産の 5%程度で推移しており復帰当時から3分の1にな っているがその 6 割は日本政府の支出になります。経済的自立の重要な資源である土地の価格 が市場メカニズムを無視して政策的に決められているという大きな問題があります。軍用地の民間転用は基 地の数倍の所得を産むことは明らかであり、基地の民間転用は軍用地主にとってもメリットが大きく地権者や 一部財界人も基地返還要求の先頭に立つケースが増えてきました。基地がある事で、国防費が 10 億円の半分の 5 億になっているという計算から、沖縄に 基地が必要というのであれば、振興予算に毎年 1 兆円を要求しても不合理ではないでしょう。そして、それ だけあれば実験都市が実現でき、経済発展に向けてあらゆることが試せるでしょう。

国際物流拠点産業集積地域、金融特区、情報特 区なども設置がされたが、正直インパクトが小さいです。中城湾 FTZ の出荷額は 80 億円がるが、外 向けでな県内・国内向けのもので、沖縄で付加価値をつけて海外に売り込む「外―外」取引こそが 制度を生かす王道であるのにも関わらずそれができておりません。立地企業が雇用や税制の優遇措置を求めて進出するのでは手段 と目的が逆転する結果となり、本末転倒では無いのでしょうか。

生活保護

生活保護も自立をうたった制度であるが、財政難と生活保護世帯比率と逆 の関係にある自治体が多くあります。共助意識の高い小島は生活保護の利用率は低いことが一般的です。しかし、高齢化と生活保護率が関連しているとすると、今後離島の生活保護率は上がると考 えられます。島の経済的自立は「シマンチュ」の野心に負うところが大きく、経済発展に大きく貢献した公的投資は同時に観光などのサービス貿易を含む貿易収支の赤字幅は拡大し 「負の貿易乗数」をもたらした主因でもありました。

移輸入超過型経済が持続化できないこと は明白で、沖縄の自立経済構築に真剣に取り組むのであれば、世界に類例を見ない日本の 公的債務の累増の中で今一度公的部門と民間部門との経済活動のバランスを冷静に分析 し、成長のエンジンを「国」から「地域」へのバトンタッチする壮大な「システム転換」 を断行する必要があるでしょう。循環型経済構築に向けた自助努力精神の発揚が不可欠です。

新沖縄振興特別措置法では使い勝手の良い制度整備がされたが、民間セクターが収益向上に つなげる閣議と意欲がない限り生きてこないと考えられます。沖縄に特化した優遇的制度は、逆差別的な 心理を産んでいると思われてもおかしくなく。沖縄優遇政策の罠にはまっているともとれます。第 6 次振興計画は、基 地の本土並み負担と、すべての沖縄だけの優遇措置を廃止する工程と覚悟を明記するべきです。

そして、経済的自立の主役は民間企業である。制度支援よりイノベーションを鼓舞する「社会・経済的インセンティブ」を醸成し、活力のある新企業を育成する環境整備の方がはるかに 有効であることが分かり切っています。高い開業率から沖縄は本土と比較し新規企業を育む社会組織が醸成されてるとも言えます。これが事実であれば、島嶼県沖縄は日本の未来型社会システムの先取 りをしていることになり未来にも希望が持てるのでは無いでしょうか。

最後に。沖縄振興策の新しい課題 格差と子供の貧困

沖縄に限らず、市場には柔軟性の高い高度の労働力が必要でありますが、沖縄の労働市場は経済構造の変化に人材供 給が追い付けない需給ミスマッチが顕在化しています。若者の失業者および非正規雇用の増 大は人間の尊厳、自尊心を著しく損ない社会からの疎外感、自立心、精神的・肉体的苦痛 犯罪、自殺を伴う社会病理現象の指標です。人口比率で自殺者の一番多い沖縄県の自 殺者の 6 割は無職というデータもあります。

そして、沖縄の大学は、第六次産業、観光、情報関連産業の労働者の 質、量において時代の要請に応えていると思えません。世代を超えて連鎖大学進学格差と、子供の貧困格差は一向に改善されていないのが現状です。。地方創 生を確かなものにするには教育環境整備が不可欠で、人的資源への投資が最優先課題であることは明確です。それによってグローバルビジネスに挑戦するにたる必要なパワーを沖縄の将来を 担う若者たちに獲得させることが必要です。社会にニーズにマッチした人材育成が、沖 縄の雇用環境改善に寄与すること目指す必要があるでしょう。

沖縄の相対的貧困率は 2012 年に 34.8%を記録しここ数年 さらに悪化しています。所得は改善されているが貯蓄は全国平均の 3 割程度です。生活保 護などの制度的手当ては、対症療法であり、依存連鎖を間違いなく産みます。そして、さらには教育貧富格差に加え情報格 差が加わってくるのが現代社会です。情報ネットワークの有無がデジタルデバイドという新種の格差につながる危 険性があります。さらに全国との格差に加えて、県内格差も全国平均を上回り、拡大傾向にあります。

本土と比較して沖縄における子供の貧困率の高さは、高失業率、高離職率、低所得、 高離婚率、高母子家庭率、低大学進学率、不安定な雇用環境と密接に関係していると思わ れ今後大きな社会問題に発展する可能性が高いです。そして、貧富の差は借金格差につながってしまいます。 沖縄ではどの県よりも相対的な貧困が政治選択に大きな影響力を持っていて、ソーシャルインクルージョンイニシアチブの島嶼地域での応用なども今後は必要になってくるのでは無いでしょうか。

島嶼の住民が社会の規範、合理性に沿って自らの行為を律する「自律」と相まって、経 済的自立は達成されると考えられます。県民所得がほぼ同じ島根県と比較し、国保料の納付 率は平成 22 年度で最下位の 38%に比べ、島根県は全国 1 位でありその他大学進学率は沖 縄 37%島根 50%、学力テスト沖縄 56%島根 63%、高校中退率沖縄 2.1% 島根 1.2%とな っています。

復帰後 40 年を経ても改善されていないのが現状です。これらの指標以外にも、少年犯罪 率、肥満率、生活習慣病率、酒気帯び運転検挙率、自殺率、不登校率などでも全国 1 位になってしまっています。マックスウェーバーは自立的経済構築に対して、社会倫理的側面を強調しましたが、沖 縄が共生と科学技術の発展に根差した社会合理的な生活環境を構築できるかどうか今後問われてくるはずです。

まとめ

島とは何かという問いに答える「島嶼学」。研究対象となる島が多様性を有する複雑な島というものなので、そのアプローチは複雑化してしまうというのが特徴でした。長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました、。

この記事の執筆者
岸本強資

沖縄県にある高校を卒業後、都内の大学に進学、ベンチャー企業やコンサルティングファームを経て、現在は沖縄を拠点に活動するフリーランスWebマーケター。琉球大学大学院で沖縄経済についても研究中。マーケの仕事と沖縄経済研究を専門にしています。 webマーケは全般対応可能でpythonや統計(計量経済学)を組み合わせた自動化や定量分析・運用が差別化ポイント。研究テーマは「沖縄経済」「生産性」「計量経済学」のあたり。沖縄の社会問題に関心があり、歴史や制度的な問題が複雑で実態が掴みづらい沖縄県が抱える問題をなるべく数字を出して発信しています。
               

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